設立趣意

 仏教芸術学会は、仏教をはじめとするアジアの宗教に関わる絵画、彫刻、工芸、建築などの諸芸術および考古学に関する研究発表の場を提供し、その研究の発展に寄与することを目的とする学術団体です。

 日本における仏教芸術分野の研究は、毎日新聞出版発行の『佛教藝術』が1948年8月の創刊以来、発表の場として重要な役割を果たして参りましたが、2017年1月に、第350号をもって休刊となりました。人文科学のさまざまな研究領域を横断して活発な議論が行われてきた希有な研究誌の喪失は、そうした研究領域の先行きにも直結する、憂慮される状況となりました。

 かつて『佛教藝術』創刊号の発刊の辞には、

「科學が人智の協力によって發展し、人間がそれを目差して集るところに文化社會が營まれるということは、敗戦後の我々が正しい學問の道を進む為にも改めて認識せねばならないことがらであろう(中略)言うまでもなく佛教藝術は東洋古代藝術の主流をなすものであり、従つて古代藝術の理解は佛教藝術の理解に外ならない。その意識の反映は現代人の佛教藝術への憧れとなつて現れた。現代人の教養の面にも佛教藝術の理解が重要な意義をもつてきたのは當然である。本誌の刊行が研究者に對してのみならず廣く一般學徒の高き教養の為に資する所あるを願つてやまない。」

と、戦後の混乱期の中で日本・アジアの文化を見つめ直すことの意義が高らかに宣言されています。70年以上の時を経た現代においてもなお、日本とアジアの芸術の精華と宗教文化の諸相を見つめ、過去と現在の対話、そして諸国民間の相互理解を支える基盤的な研究領域として、ますますその役割は高まっているものと思われます。

 こうした中で、先の『佛教藝術』の編集組織であった佛教藝術學會の名と理念を引き継いで、仏教芸術研究の基盤となる新たな研究誌の発行を行うべく、多数の賛同者を得て、2017年6月に当学会が設立されました。

 本学会では、学術的・民主的な活動を通じて新たな時代にふさわしい仏教芸術研究を進展させるとともに、多くの人々を惹きつけてやまない仏教芸術の魅力を発信する主体となるべく、その活動を充実させて参る所存です。多数の熱意ある方々の当学会へのご参加を、心よりお願いいたします。